川崎幸病院 川崎幸病院大動脈センター 医療法人財団石心会 大動脈治療の最前線 心臓血管外科の最前線    
         
       
   

川崎幸病院における大動脈解離手術に関する経緯について
   
   

 

患者家族・神奈川県 2004年寄稿

2004年 大動脈解離・胸部大動脈瘤破裂

平成15年12月初め、妻は原因不明の腹痛により市民病院に救急入院したが、その後微熱が続くも相変らず原因不明のまま大よそ2ヶ月経過し、1月下旬、初めて胸・腹部CT検査が実施された。
その結果、大動脈が解離し、通常の数倍に膨張し、いつ破裂をしてもおかしくない状態にあり、緊急手術の必要性が示唆された。

しかし、主治医から、市民病院ではこれに対応スタッフおよびパワーがないため手術不可能であり、心臓血管外科部長からも過去の心臓手術のために、大動脈と胸骨の癒着も見られ、これに対する手術は当院では出来ないとの話があった。
市民病院より、A大学・心臓血管センターを紹介され、早速訪問した。A大学助教授は、私の持参したCT写真を見て、市民病院外科部長と同様の見解から手術は施行困難であるとの見解を示した。
そこで私は、かつて妻は心臓人工弁置換手術をB大学病院においてB教授の執刀で行った経緯があることを話したところ、そちらと相談されるのがベターではないかということとなった。
私はA大学をあきらめ、B大学病院B教授を訪ねた。
相談の結果、かなり危険な手術ではあるけれど、イチかバチかならやってみても良いとの答えだった。
その対応のあまりの乱暴さに、実際のところ戸惑いを隠せなかった。

このとき、実は同時進行で市民病院の主治医に心臓手術に優秀なドクターは居ないか、何気なく尋ねたことがあり、その際、かなり名の知れたC病院というところのC先生という心臓外科医が居られる、ただし、「かれは心臓バイパス手術の専門だからなあ」と言われたが、この際、わらにでもすがる思いで早速アポイントをとり訪ねた。
C先生は「大動脈手術に関しては日本でも有数の川崎幸病院の山本と言う医師がいます。
彼ならきっと引き受けて、そして、成功させるでしょう」と、早速その場で連絡の電話を入れアポイントを取って下さった。

そこで、直ちに川崎に飛び山本先生に面会、CT写真に基づき判断を仰いだ。
山本先生は、"確かに困難な手術ではあるが、リスクがあるからといって回避できる手術ではない"と言い、直ちに手術を引き受けて下さった。
私たち家族の不安に対しては、「私は、手術が初めから成功しないと考えたら、そのような手術は引き受けません。」とおっしゃられたので、大変心強く思い、手術をお願いすることを決意した。
B大学病院に対してはお詫びの上キャンセルさせていただいた。

ところで、妻の特殊性というかハンディキャップとして、
1)23年間にわたる人工透析患者である。
2)3度に及ぶ心臓手術の経験者であり、人工弁が挿入されている。
3)数回の脳梗塞の既往がある。
つまり、どこの大学病院でも手術を躊躇する、いわゆるハイリスク患者である。
このような状態を踏まえて、体力的にもかなり危険な手術であったにもかかわらず手術は直ちに施術された。
手術時間は約6時間であった。(B大学病院では12時間要すると言われていた。)
術後、およそ1ヶ月のリハビリ後、湘南東部総合病院心臓病センターへ転院、以後人工透析と身体的リハビリテーションを行った後退院し、現在に至ったのである。

おわりに。

今回の大動脈手術にあたっては、いろいろと幸運が重なったが、大学病院には無い、それぞれの専門分野に対する医師同士の個人的ネットワークが存在することを体験し、決してあきらめてはいけない、徹底した調査の必要も体得した。
さらに言えば、市民病院に緊急入院した時点、あるいは診察後2ヶ月間原因不明のまま放置せずに(微熱、発熱に対して氷まくらだけの処置であった。)CTあるいはMRI等検査を受けていれば2ヶ月後ではなく早い時期に原因が判明したのではないか、とも考えた。
この辺りに大病院の限界があるのだろうか。

川崎幸病院の山本医師には術前、術後のケアーを徹底して受け精神的にも安心感を抱かせて頂いた。
先日、妻は術後1年の検診を受診したが問題点は見つからず、今も元気に生活している。